魯迅による「阿Q正伝」という物語がある。青空文庫でだれでも読むことができるので、読んだことのない方は一度目を通していただくのも良いかもしれない。

簡単なあらすじは以下のようなものだ。

 

阿Qという何のとりえもない人物がいた。彼は家を持たず、日雇いのような仕事をして地域を転々としていた。彼は喧嘩をすることが多かったが、殆どの場合は負けてしまった。

しかし、彼は「精神的勝利」を収める方法を身につけており、たとえ自分が喧嘩に負けたとしても、「子供に打たれたようなもんだ」など、負けても勝ったことにしてしまう心のコントロール方法を身につけた。

ある日彼は権力者の使用人の女性に手を出し、その権力者の怒りを買う。それ以来彼はどこに行っても煙たがられ、生活に窮するようになった彼は盗みを働くなど堕落してゆき、ついに彼は村から姿を消す。

しばらく姿を消していた阿Qが戻ってきた時、村人たちは阿Qの様子が変わったとしばらく恐れたが、何も変わっていないことが判明するとまた、阿Qは馬鹿にされるようになった。

そういった状況に不満を抱いていた阿Qは、革命党の威を借りて村人たちに高圧的に接するようになる。しかし、革命党がその地の権力者の家を襲撃したことを受け、阿Qは捕まってしまい、ついには銃殺されてしまう。

 

 

彼はプライドだけは高く、何もしない人間の典型として描かれている。

この小説は魯迅が当時の中国人社会を批判して書いたのだと言われているが、おそらくこのような人は世界のどこに行っても存在するではないかと思う。

 

さて、彼の悲劇はその「プライドの高さ」から始まる。

自分の弱さをひたすら覆い隠し、勝った気になる彼の姿は「ポジティブシンキング」といえば聞こえは良いが、滑稽なほど悲惨である。

 

インターネットの隆盛により、人は自分の隣人のことが必要以上に見えることになってしまった。マルハニチロホールディングスの農薬混入事件の犯人も、秋葉原の通り魔も、「負けや自分の弱さを認めることができない」といった一種の現代病に侵されていたのだろうか。

阿Qという人物に込めた魯迅の皮肉は、今なお現実の社会問題である。

 

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(2024/4/21更新)